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あけましておめでとうございます、というお正月にふさわしい感じのタイトルである。
中国の庶民に伝わる笑い話、日本でいうところの落語的な話を集めた本である。かくいう日本の落語で有名な「まんじゅう恐い」も、もとはと言えば中国にその元ネタがあるのである。
さて、本書は、ばか者の話、こっけいな話、エロい話など、6つの観点からの笑話によって構成されている。あとがきに「歴史はしばしば庶民の生の生活を無視する」というようなことが書いてあったが、確かに歴史にはそういう側面がある。しかし、その時代の人々が何を楽しみ、何に笑っていたかということは、その時代の生身の人間、ひいては生の空気を知るうえで、非常に重要なものであると思われる。
現代の我々を後世の人が知る際に、戦争や自然災害や政治の大きな出来事ばかりを並べて推し量られても、それは見当違いもいいところになるのではないか。日々のほとんどは、くだらない、取るに足りないことで成り立っている。その集積こそが、気づかないほどゆっくりと、しかし確実に歴史を動かしているに違いないのだ。
以下本文よりいくつかの笑話をご紹介。
・「金持」
金持ちが貧乏人に、
「わしには十万の蓄えがあるぞ」
貧乏人、
「わしにだって十万はある。知らないでしょう」
金持おどろいて、
「お前が十万も持っているって」
貧乏人、
「あなたは持っていても使わないんだし、私も使わないんですから、あなたと私とは同じようなものさ」
・「薬を塗る」
ある女房、陰部にできものが出来たので、医者を呼ぶと、医者、その夫がバカなのを知っており、
「この薬は、わたしが直接塗ってやらなくてはならない」
と言って、薬を自分のもののさきにつけ、女房と事を行った。夫、そばで見ていたが、大分たってから、
「もし、あの薬が先っちょについてなかったら、おれも気がもめたにちがいない」
・「釘と蜂」
眼のわるい男、門の上に小さな釘があるのを蠅だと思い手で払ってけがをし、いまいましげに、
「てっきり蠅だと思ったのに蜂だったのかあ」
以上
まあ、かように脱力するようなばかばかしい話が多いのだが、現代にくらべると娯楽の極端に少ない時代に、こういう話を聴いて笑っていたのかと思うと、人間とは、本性的には罪のない、ごくごくかわいらしい生き物なんじゃないかと思えてくる。が、しかし、現実はいつの時代も血なまぐさかったりするから、人間というのはつくづくよくわからない。