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いかにも学者だなあという作者が、ぼやぼやととりとめもなく考えを綴ってみました、という感じのゆるい一冊。
どこか世間離れした――へえ、庶民はそんな感じで生きてるんだねえという距離感――ものごとへの眼差しが微笑ましい、というより、うらやましい。ぼくもそのようにぼんやり生きていきたい。
さて、断片的に内容紹介。
江戸時代の人々は寺の鐘の音で起きていた。おもしろいことに、記録によると、こうした江戸のお寺はその鐘によって起きる人々から目覚まし賃とでもいうべき料金を徴収していた。現在の金銭に換算すると一月に150円程度だった。
作者の、戦後間もない頃の通勤電車の回想。
電車は焼け残りのオンボロ車輛。運転本数も少なかったから、文字どおり車内はパンク寸前。ガラス窓が割れるなどというのはごく当たり前で、ときには人間の圧力でドアが外れたりしたこともあった。ガラス産業も壊滅状態にあったので、窓ガラスの入れ替えもできない。割れたあとはベニヤ板を打ち付け、おかげで車内は真っ暗。それに加えて、停電もしょっちゅう起きた。満員のうえに、電車が20分も30分も停止し続けていたのでな、もうどうにもならぬ。夏の暑い日には、失神する人なども現れた。
本のタイトルはあんまり関係なく、作者の気ままなエッセイとしてみれば、まあまあ読む価値はあるかもしれない。