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読み終わって、なんか複雑な心持ちだけど、やはりこれはすべての人に読んでほしいと思う。
戦争そのものが悪いのか、戦争を起こした一部の人間が悪いのか、戦争の最前線で戦った人々が悪いのか。
よくはわからない。
そもそも戦争にはかならず敵があり、味方がある。この戦争においては当たり前の、”敵”という感覚がわからない。敵を倒すこと=善であり名誉であり自己実現ともなる、その感覚があまりにも遠い。
ぼくのような世代には、戦争は言葉でしかない。
戦争で勝つことを、敵を、人間をより多く殺すことをアイデンティティとして生きた人がいる、その事実が非常に重く伝わってくる。徴兵から終戦、抑留から日本への帰還までの、よくも悪くも壮大な体験記である。
また内容のいくつかを紹介。
徴兵検査のさい、しょうゆを飲むと心臓がドキドキして、何とか免れることもあるという噂があった。しかしそのような行為に対する懲罰、さらには世間の目が恐ろしかった。
上記の検査のさい、四つん這いにさせられ、肛門までのぞかれる。このときに、もしも花柳病(性病)などにかかっていれば、その場で怒鳴られ殴られることはもちろん、非国民あつかいされ、村にはいられなくなる。「お国の大事のときに」というわけだ。
かつて軍隊を運隊ともいった。戦場に出れば、いつ弾があたるかわからない。下を向いた途端にシュッときて、すぐ後ろの戦友の顔に直撃したなどという話はゴロゴロあった。
このある憲兵は、千人以上の中国人に拷問を加えたという。
漫画や映画でしか見たことがないような、水攻め、焼きゴテ、角材の上に座らせ重石を乗せる、爪の間に針を突き刺すなど、人間の所業とは思えないありとあらゆることをしたという。
しかし元は、畑を耕すときには、虫をさえ除くような人間であった。そのため、はじめて上官より拷問の手ほどきを受けたときは非常なショックを受けた。憲兵をもうやめようとも思ったという。
しかし、次第に次のように考えるようになり、中国人をおなじ人間とは思わなくなったという。
中国人を劣等民族と思い込む。チャンコロという蔑称が、その差別意識を固めさせた。そして、自分は世界一優秀な大和民族であるから、チャンコロの一人や二人殺しても何らさしつかえない。まして戦争中だ。相手は敵だ。より多くの中国人を殺せば、自分の、所属部隊の、ひいては国のためになる。
なんか、やはり人間はよくも悪くも地球上で唯一、思考する存在なのだろう。
しかしひとつくらい、思考停止する事柄があったっていいように思う。
まるきりバカになって、何も考えずに、どんな利益があるように見せかけられても、いついかなる時でも、ただただひたすらに「戦争反対」。
とにかくはそう思う。