満足死 寝たきりゼロの思想 (奥野修司/講談社)

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例によって死関連の本。死の話題サイコー!って、サイコーってなんだよ。

下記引用。

佐賀町では比較的塵肺と肝炎の患者が多い。塵肺は土讃線のトンネル工事に狩り出されたのが原因で、それがいま現れているという。肝炎は、鍼灸がさかんだったために広まったのではないかと疋田は推定している。むかしの鍼灸師は打つ前に鍼を舐めたからだ。

次第に介護が重くなるのを気遣った疋田は、八百恵に「ヘルパーを派遣してもらったらどうか」とすすめた。八百恵は夫にたずねると、「おまえだけで上等や。わしらだけで泣いたり笑ったりして暮らそうや」と言った。最後に歌ってから数日後、八百恵は「牛乳でも飲もうか」とたずねた。夫は「うん」とうなずき、一口飲むと妻の腕の中で静かに息を引き取った。

ベッカー教授は、イギリス、ドイツ、日本の三カ国で、「両親の面倒を最後まで看ますか」と質問をしたところ、イギリス人は50%、ドイツ人は62%、日本人は75%の人が「ハイ」と答えたという。ところが、実際に親が寝込んだときにそれを実行したかどうかを調査すると、「あなたは親を世話しましたか」という問いに対し、イギリス人は40%、ドイツ人は50%だったのに対し、日本人はわずか20%しか実行していなかった。現実は期待値とは逆で、日本の親は約五人に一人しかわが子に面倒を見てもらえないのである。

引用終わり。

ちなみに「疋田(ひきた)」とは、満足死という考え方を提唱する医者の名前である。

「おまえだけで上等や。わしらだけで泣いたり笑ったりして暮らそうや」

こういうセリフに、おれは弱いんだよなあ。そして、最後の飲み物がお茶でも水でもなく牛乳だったところが、そこはかとない深遠さと、神聖さとがかもし出されているような気がする。

また、実際の介護率について。まったく、日本は建前社会だということか。こういうデータはつくづく興味深い。調査し、まとめ、発表する研究者の方々には頭が下がる。こんな貴重なデータを、たかが数百円で知ることができることを考えると、なんてありがたいんだと思う。

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