秘密 (東野 圭吾/文藝春秋)

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なんの変哲もない妻と娘ひとりの三人家族。たまたま、帰省がてら、妻子だけでバスに乗ってスキーに出かけたところ、バスが事故を起こす。妻は即死。娘は意識不明。

しかし奇跡的に娘は意識不明状態から回復する。しかし、娘の人格は失われており、妻の人格になっていた。

こう書いてみると設定はかなりSF的で、なんて胡散くさい物語なんだという気がするが、それを無理なく自然に現実の世界にまで落とし込み、読者に感情移入させるセンスはさすが東野圭吾だと思う。って、彼の著作は二冊目でしかないが。

それにしても主人公の平介はぼくと妙に人格が似ている気がする。そういえば最近、小説を読むと決まって自分と似ているとかなんとか、感情移入MAXな発言をしているような。たぶん、歳をとったせいである。

一番がつーんときたのは、娘の身体だが精神は妻のままのモナミが高校生になり、恋愛まがいのことをしようとしたときに、平介が言い放った言葉。

おまえに普通にする権利なんかない!

わたしにはあなたを裏切る気なんかないし、わたしにはほんのちょっとしたことを楽しむ権利すらないのか、という妻に対しての発言。

ああ、ああ、ああ、と、自らを重ね合わせた次第。

おれ、こんな発言ばっかりしてたよなと思う。いちおう平介の身になって言わせてもらうと、この発言は実に正論なのだが、正論ゆえに悲しい。

事実、こう言い放ったあとに、なんともいえない虚しさやるせなさを感じている平介の心理描写が続く。

どちらかというと、小説なんて作り話でばかばかしいというスタンスで新書を読み漁るぼくではあるが、なるほど、小説の楽しみというのはこういうことであり、小説は確かに娯楽である。

しかし、めちゃくちゃ影響されてしまい、いま、心がとても虚しい。いろんなことを、すべて捨て去ってしまいたいようような心持ちである。

文中では、妻も平介もよく泣く。小説ならば、泣けばしっかりと物語が進行してゆくが、翻って現実。泣いても何も変わらず、話も進まないのが現実である。事実は小説より奇なり。泣いてどうにかなるなら、一年でも二年でも三年でも、泣いて暮らしたって構わないと思う。

記事カテゴリー: 読書