なぜ、これがアートなの? (アメリア アレナス (著), 川村記念美術館 (監修), 福 のり子 (翻訳)/淡交社)

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星5つを超えて星6つです。

今まで読んだアート関連本の中で、もっとも優れている。現代アートに対する素直な見方を、現代アートは素晴らしいんですという押し付けのない、すっと心に響く表現で現代アートという世界に導いてくれる。

というか、自作にオノマトペを入れようと思ったのは、この本の影響によるところが大きい。さまざまな表現とその意味を知るうちに、自分の表現はこれが最善なのか?と考えさせらた。

なぜそういうテクスチャーをしているのか。その絵の具の垂れ方はどういう効果を強めているか。作品全体の雰囲気から何を感じ取れるか。その作品が作られた背景はなにか。

約70点の作品を通して、アートの見方がこれでもかという感じで深められる。わたしはほとんどの作品を早歩きで素通りする見方を是としてきたが、もう少しじっと立ち止まって見てもいいのではないかと思った。雰囲気とか、色とか、テクスチャーとか、もっとよく見れば、染み出てくる何かしらに気づけるような気がする。

以下本書より引用。

一般的な考えに反するかもしれないが、作品の意味は作者の責任外の問題である。さらにその作品を制作するにあたって影響を与えたと思われる私的、あるいは歴史的事実関係をいくら調べ上げても、それは作品の意味ではない。肉体に精神が宿るように、作品のなかに自ずと意味が存在するというのでもない。それよりも意味は、人々が作品を見るという行為を通じて作品とおこなうコミュニケーションによって、作品に付加されるものなのである。

作品にとって重要なのは、作者の意図がいかに表現されているかではなく、結果的に鑑賞者の意図を引き出せるかということなのである。

広義において、感覚と理念、あるいは私たちが感じることと、認識していることの間の結びつきを、故意に食い違わせることこそが、今日のアートにおけるひとつの重要な鍵なのである。

戦争とは、あらゆる文化において、疑いなくもっとも重要な芸術主題のひとつである。〜中略〜ナチスによる大虐殺や広島の原子爆弾のような想像を絶する殺戮という体験を、アートは少しでも伝えることができるのだろうか、答えは「ノー」である。結局、戦争の恐怖を伝えるよりは、その栄光を奏でるほうがはるかにやさしい作業なのである。

言語ほど「実体」のあるものはほとんど存在しない

知らないことをほのめかされるとき、私たちの心や感覚は揺さぶられる。それが美ではないだろうか

1972年、ひとりの若者がフォルクスワーゲンに自らの身体を磔にし(掌はほんとうに車体に釘づけされている)、ロサンゼルスの市中を走りまわった。〜中略〜クリス・バーデンのようなパフォーマンスアーティスト〜中略〜パフォーマンス・アートの目的は、作家によって異なる。しかし煮詰めれば、芸術鑑賞という感情の安全地帯から鑑賞者を引きずり出して、アートを生命との境界線ギリギリまでもってくるという危険な作業に、私たちひとりひとりを巻き込もうとしていることだといえるだろう。

引用終わり

現代アートを志すなら、一読して決して損はない。むしろ死ぬほどお得。わたしのバイブルにしたいと思う。