2025年を制覇する破壊的企業 (山本康正/SBクリエイティブ)

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ユヴァル・ノア・ハラリのホモ・デウスやサピエンス全史の未来版といった趣のある非常にエキサイティングな一冊。

よくも悪くも、我々は本書で紹介されている11社に、直接間接に人生を左右されることになることだけは間違いない。

何屋でもない時代

○○一筋何十年というのが、長らく商売のスタンダードであったが、現代はそんな牧歌的な時代ではないことを肝に銘じておかなければならない。

シリコンバレーでは、GAFAに続くベンチャーが、今まさにこの瞬間も、次々と生まれ続けています。当然、GAFAはそのことを知っていますから、自分たちを脅かす可能性のあるベンチャーは、できるだけ小さいうちに買収するなどして、囲い込んでいます。そうして取り入れた新しいテクノロジーで、新たなビジネスを展開、さらに巨大化していく。いわば、オセロの隅を常に押さえにいっているのです。そこには業界の壁もありません。

M&Aなどという言葉では生ぬるいような買収に次ぐ買収が、彼らを比類なき巨大企業にしたのかと思うと、妙に納得がいく。

コンピューターが支配する

SF小説では機械が人間を蹂躙、支配するのがお定まりだが、おそらく現実のコンピューターはもっとソフトに、秘密裏に、我々が気がつかない内に支配してしまうものなのだと思う。

クラウドが登場したことで、パソコンやスマートフォンなどのいわゆるエッジ端末は、自ら重い動作をする必要がなくなりました。つまり、高性能なハードウェアは必要なくなったのです。ハードウェアの目的は、データをクラウドに飛ばすことに変わったからです。 (中略) スマートスピーカーはいい例です。スマートスピーカーに話しかけた声の処理は、端末(ハードウェア)では一部の処理しか行っていません。インターネットを介しクラウドに飛び、そこでAIが解析し、再びスマートスピーカーに戻ってきます。極端に言えば、スマートスピーカーはただの箱なのです。

この考え方は極めて重要だと思う。人間が有限の有機的な肉体を持つ限り、モノにこだわってしまうのは仕方のないことではあるのだが、目の前のスマホもただの箱で、本質はその中には存在しない。

ミニマリズム的な脱物質主義は、そのような空虚さに気がついた人々による一つの悟りなのかもしれない。

モノを売ることの本質を再考する

リタイアまであと数年というような人でも、小手先では乗り切れない時代の転換点が迫っていると感じる。

小売りであれば、商品の良し悪しにこだわっているところが依然として多い。質の良い商品を取り揃えることはもちろん大切です。しかしこれからの未来では商品の良し悪しよりも、サービスの使い勝手、体験を重視する傾向にあります。ここがズレている企業は、確実に淘汰されていきます。良い品を大量に仕入れ、他社よりも安い価格で販売していれば必ず儲かる。そのような時代ではないのです。

これを読んでふと思い出すのは、「富山の薬売り」である。全国各地の客先に薬を置いてもらい、年に数回訪問して、客が使った分だけお金をもらう。

これはいわゆるUX、体験を売るというビジネスモデルの最初期にあたるものではなかろうか。あるいは近年とみに増えているサブスクリプションサービスにも通ずる。古くなった薬や傷んだ薬は売り手の負担で自動的に交換されたろうからだ。

なにはともあわれ、これからを生きる我々は、あらためて商売というものについて考え直さねばならない。

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