ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか (梅田 望夫/筑摩書房)

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画像の背景が気になった方。そう、これはドンキホーテ(広島店)のトイレである。

トイレでは読書である。おそらくぼくの知識の7〜8割はトイレで醸造されたものである。

将来の夢はおぼっちゃまくんにあるような、千畳敷のトイレを作ることである。もちろんそれは自分専用であり、家人であろうとも使用厳禁である。指紋もしくは声紋センサーを付けるのである。本棚を作り付けで設置し、24時間の大半をトイレで過ごすのである。そして晩年は雪隠先生と呼ばれ、大腸菌群に最期を看取られて昇天するのである。

と、そんなことはどうでもよい。この本についてである。

教養というよりも、自己啓発本に近いような内容である。ウェブの世界がもうひとつの地球となっていくこれからの時代をどう生きるべきか。著者の豊富な知識や経験、幅広い交友関係から得た思索に裏打ちされた考え方が明快に、矢継ぎ早に提示される。それらは決して思いつきのような空論ではなく、そのひとつひとつに、思わず首肯し、また考えさせられるクオリティがある。

とか、適当に小難しく書いたが、以下本書より抜粋。

将棋の羽生善治二冠は、〜中略〜「学習の高速道路と大渋滞」という概念として提示した。いったん言語化された知がネットを介して容易に共有されるこれからの時代は、ある分野を極めたいという意志さえ持てば、あたかも高速道路を失踪するかのようなスピードで、効率より過去の英知を吸収できる。〜中略〜しかし「学習の高速道路」も、高速道路を走りきったなと思ったあたり(「その道のプロ」寸前)で大渋滞が起こるのだと羽生は言う。

【Ruby開発者のまつもとゆきひろの言葉】

100年前、「野球で飯を食う」と公言するとかなり笑われたと思う。しかし、多くの人がシステムを構築してきたので、年収数億円のプレイヤーが登場するようになった。今、「オープンソースで飯を食う」といっても「ありえない夢」と思われるかもしれない。だが、そんなに遠くない未来には「簡単ではないけど実現可能な夢」になっていると、私はかたく信じている。いや、すでに「簡単ではないけど実現可能な夢」になっているのだ。プロ野球選手になるよりは100倍簡単だと思うぞ

英語で「in the right place at the right time」という言葉がある。「正しいときに正しい場所にいる」。このなんとも不可思議な言葉の重要性を、私はシリコンバレーで学んだ。

コールトンの職業はプログラマーだった。しかし彼はフルタイムのミュージシャンとして生きたいという夢を持っていた。

地球上にはさまざまな矛盾や難題に満ちているが、それは過去から現在に至るまでずっとそうだったのであって、そう簡単に大きな破局を迎えたりはしない。人類の叡智をその程度には信頼してよいと思う。

以上。

確かこの人のひとつ前の著書、ウェブ進化論でも紹介されていた「学習の高速道路と大渋滞」という概念は確かにけっこうなインパクトがあって、よく覚えている。確かにその通りだと思う。これからは「プロ並」と「プロ」の戦いになるのだろう。

それともうひとつ、「フルタイムのミュージシャン」という考え方。一瞬、とんでもない違和感にちょっと笑ってしまったが、素直に感銘を受けた。そんな表現を今までまったく考えたことがなかったのだ。ああそうか、じゃあぼくは「フルタイムの芸術家」になりたいのだなあと。そう考えると、やけにすっきりとして、未来が少しだけ鮮明になった気がする。さしずめ今はパートタイマーだかアルバイトだかの美術家といったところであり、がんばって正社員になるぞ、美術家の、という感じである。

それはもう、あきれるほど明快である。ぼくの夢は、フルタイムの芸術家。

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